私は、BEZERA Iのお客様相談窓口を担当する前は、エンジン部品の製造部門で検品の作業を担当していました。あの頃の私は、当時置かれていた会社の状況と同じで、与えられたことを問題なくこなすことが仕事だと思っていました。部品に問題があれば、メーカーにとってはリコールに繋がるわけで、弊社が造る部品の品質=メーカーのエンジン品質となります。問題を発生させないことに徹し、自分で何かを考え生み出すということはありませんでした。
2年前、会社が示した「エンジン部品の下請けからエスプレッソマシンメーカーへ」の転身が私も変わるきっかけとなりました。製造部が掲げた、『世界のエスプレッソマシンのスタンダードとなる』。その言葉に触発され、自分に何ができるのかを考えるようになりました。
私には、製品を設計することも造ることもできない、しかし、どこの部分で使用される部品であるかを理解し妥協しない検品を行ってきた自負はありました。エンジンの部品がBEZERA Iに変わったとしても、パーツの一つひとつがどこで使用されるものかを把握しています。それは、万が一にもBEZERA Iが故障した際、お客様の立場になり対処できるのではないか…。
提案書3枚にお客様相談窓口の必要性と自分自身の想いを込めて、社長にお話をさせていただきました。ところが、社長からは思わぬ言葉が返ってきました。
「これまでのエンジン部品とは違い、BEZERA Iはカフェの店長やオーナー様がお客様になります。そして、BEZERA Iの技術を活かし家庭用のエスプレッソマシンを製造するとなるとお客様相談窓口は不可欠です。私も同様の考えでした。ただ、今のあなたには任せられない。この提案書には、大切なポイントが抜けています。もう一度再考して、提案してください」
お客様相談窓口の設置は許されたものの、私には任せていただけない。結果を受け、「じゃあ、誰なら任せられるの」と複雑な心境のまま、BEZERA Iのプレゼンテーターでもあり、今回の提案を応援してくれていた製造部の副長に結果の報告にいきました。
「この内容でお客様相談窓口の設置を社長が認めてくれたとしたら、あなたの気持ちに配慮して譲歩してくれたと思うよ。この提案書は、自分が、自分が、の視点で書かれていて、お客様に対する具体的な姿勢が抜け落ちているんだよ」
お客様相談室のスタンダードを目指す
改めて自分の提案書を読み返してみると、副長の指摘通り自分の熱意ばかりを伝えるものでした。必要性ばかりを訴え、お客様相談窓口が目指すべき姿勢が抜け落ちていました。私がお客様のためにできる具体的なことは何か、お客様の立場になるというの何か、寝ても覚めても自問自答する日々が続きました。そんな中、パソコンのSIMカードを解約するために訪れた携帯ショップの店員さんの言葉を思い出しました。パソコンを購入した際の体験版SIMを利用していたため、解約ができない状況に困っていました。担当してくれた店員さんは、何とかしようと思い当たる部署に問い合わせをしては「その答えは、どこにありますか」と解決策を探してくれました。
「もしかすると、この場では解約できないかもしれませんが、お客様が不安になられている要素を一つでも多く解決しますね。ご来店していただいた貴重な時間を無駄にしないようにしますね」
解約が進まないことは問題ですが、店員さんが自分の気持ちを察して解決策を模索してくれている姿は、短い時間でしたが「この人が出した結果は、とりあえず信じられると」と思いました。お客様相談窓口が目指すべきは、あの体験した時間ではないか、一つの答えに辿り着きました。
一週間後、社長に提出した提案書の4枚目に記した言葉は、「お客様の不安を取り除くために、その場で出来ることを探す」でした。故障して不満や不安を抱いているお客様に対し、電話の対応で出来ることを一つでも探し出し提案することでお客様のストレスを少しでも軽減することがお客様相談室のあるべき姿だと。
BEZERA Iがエスプレッソマシンのスタンダードになることを目指すならば、お客様相談室が提供するサービスがスタンダードになることを目指します。